世界中が熱狂するFIFAワールドカップが開幕。
わたしはサッカーを観るのもプレーするのも大好きだったので、何度か国際大会に行ったことがある。2004年の欧州選手権(ユーロ)ポルトガル大会、2006年のW杯ドイツ大会だ。ユーロはもう10年も経つんだ・・・。
で、今回のブラジル大会。残念ながら、現地に行くことはない。ピッチから遠ざかった日々は、サッカーへの情熱自体も遠ざけてしまったようだ。
現地の治安がよくないとは聞いていたが、実際に窃盗や強盗事件が起きてしまった。「日本人は小金持ち」のイメージがあるためか、狙い撃ちされたのかもしれない。チケットやカメラならともかく、財布やパスポートといった「貴重品一式」を取られちゃった人もいるそうだ。彼らの無念さを思うと胸が痛む。
全財産を失った彼らは今、どこで、何をしているのだろう?
「拠り所」となるはずの日本大使館はパスポートの再発行には応じてくれるものの、ほんとうに最低限の支援しかしてくれないらしい。
【参考】
中国でパスポートと財布を取られホームレスになった男性のニュース
でもね、彼らのほんとうの旅はそこから始まると思うんだ。スタジアムの歓声を聞くこともなく、まずは生き延びるために活動することになるだろう。今だったら国際送金も可能だろうけど、財布がないのだから受け取れない。そう、キャッシュを稼ぐしかないのだ。
まずは、日本人を見つけて窮状を訴えるだろうか。路上にポルトガル語と英語で「全財産を失いました。ヘルプミー」などと書いて募金を募るだろうか。身体を使った特技がある人は、歌を歌ったり空手の型を披露するなどして小銭を稼ぐのかもしれない。
そこで、自分にも似たような経験があったことを思い出した。
3年ほど前にリピーター創出コンサルタントの一圓克彦さんと香港に行ったことがある。香港国際空港に降り立った一圓さんの第一声は、
「寝坊して、財布忘れた」
だった。対するわたしの第一声は、
「へぇー」
だったと思う。パスポートに挟んであったわずかばかりの香港ドルだけが頼りだ。
そのまま我々は香港市内行きのエクスプレスに乗り込み、雨が降りしきる昼下がりの九龍で降りた。「まあ、ビールでも飲みましょう」と一圓さんが言い出し、香港ツアーが始まったことを祝して乾杯。
たぶん、お互いこれから起こりうる未来に思いを馳せ、ニヤニヤしていたと思う。彼が見事だったのは、財布を忘れたことを嘆くことなくその場を楽しもうとする姿勢だった。そんな姿を見て少しばかり安心したわたしは、それ以上何も言わなかった(今思い返すとひどい奴だと思うけど・・・)。で、彼はその後どうしたかって。
たしか、3日目だったと思う。
「天田さん、きょうはお客さんに会いに行くので、一人で行動してください」と言い残して、単独行動に出たのだ。
そして、夜。我々は再び市内で落ち合った。彼は現金を手にしているではないか。
「どうしたの?」と聞いたわたしに、彼はこう答えた。
「知り合いの日本人経営者に頼み込んで、
コンサルして稼いで来ました」
ほぅー。なかなかやるやんけ。そう、彼は出版直後の気鋭のコンサルタントだった。
こういった極限状態で大切なのはキャッシュよりも「稼ぐ力」なんだよね。カリスマコンサルタントの神田昌典さんは、著書『禁断のセールスコピーライティング』で、
「焼け野原になっても紙とペンだけで、
立ち上がる力がコピーライティングの本質」
だと言ったっけ。
「いつでも、どこでも稼げる」という自信は、キャッシュへの依存や不安をなくすのだろう。預金通帳をこまめにチェックするのもいいけれど、稼ぐチカラを磨くことのほうがもっと大事だと思い出したW杯3日目。
そして、最後に付け加えたいのだけれど、W杯はスタジアムで観るのもいいけれど、「現地の空気」さえあればそれで十分だということ。かつてわたしも血眼になってチケット争奪戦に乗った一人だけれど、いまでも記憶に残っているのは「チケットが取れなかった・・・」という失意を抱えながら足を運んだ現地のレストランやパブだったんだ。現地の人たちとビールを飲みながら観た試合の数々は、スタジアムの記憶を遥かに凌駕する。
先の全財産を失った彼も、きっとどこかでテレビ観戦したにちがいない。恐らく生涯記憶に残る試合になるだろう。たとえどんな状況に置かれていたとしても、W杯は観る者を圧倒する熱量を持っている。それが、他のサッカーの試合とは異なる魅力であり、奥深さなんだと個人的には思っている。
さあ、次はギリシャ戦。我々の落胆した気持ちは時空を超えてブラジルの選手たちに伝わってしまうから、まずは上を向いて歩こう。
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